MS-DOS時代には、ファイラーがないと非常に不便でした。
IBM-PCでは、「Tree」というディレクトリ(Windowsでいうフォルダ)をツリー表示してくれるツールがありましたが、
残念ながらPC-98シリーズではハードウェアの違いのために動作しませんでした。
1986年にはPC-98シリーズ向けに「エコロジー」という市販ソフトが登場しました。
このソフトもツリー表示ベースのファイラーでした。
後に、A.Idei氏による「FD(エフディ)」が登場しました。
その高速性に驚き、すぐに「エコロジー」から乗り換えました。
さらに、「FD」はフリーソフトとして提供されていたこともあり、多くの人々に利用されました。
「FD」は最初、岡山県のUJO-NETで公開され、その後Niftyで公開されました。
Niftyで公開されたことから、PC-98シリーズのユーザーのほとんどが利用していたと思われます。
このソフトは非常に有名であり、その後のファイラー系アプリケーションに大きな影響を与えました。
さらに、「FD」はUNIX(Linux)にも移植され、FDCloneという名前で利用されています。
「FD」の起動画面
以下が、「FD」の起動画面です。
ファンクションキーの文字は、ほとんどがDOSのコマンドになっています。この文字の中の黄色になっている文字がコマンドキーを意味しています。
例えば、’C’キーでコピー(Copy)でき、’R’キーで、ファイル名を変更(Rename)できます。
「FD」は、「File & Directory Tool」の略称であり、その開発は1989年にスタートし、
第1回フリーソフトウェア大賞において、ユーティリティ部門賞を受賞しています。
「FD」に興味を持たれた方は、以下のウェブページを参照してみてください。
「FD」のキーアサイン
MS-DOS時代のファイラー「FD」の特徴の一つは、キー操作やキーコマンドのみを使って効率的に操作できる点です。その当時はマウスを使用していなかったため、キーコマンドが主要な操作手段でした。
以下に、「FD」のキーコマンドの説明を表にまとめてみました。
少し触れましたが、基本的にはDOS用のコマンドの一部のキーを使用して、対応するコマンドを実行する仕組みとなっています。
多くの「FD」の流れを汲むファイラーも、この仕組みを採用しています。
表の一番右の列は、「As/R」のデフォルト状態でのキーコマンドの対応状況です。
お分かりいただける通り、ほとんどのキー(コマンド)に対応しています。
一部対応していないキー(コマンド)もありますが、これは他の操作や機能で代替可能なため、
特にキーコマンドとしての必要性は低いものばかりですね。
改めて、その仕様の優れた点も含めて「FD」の偉大さとその影響力を再確認することができます。
キー | DOSコマンド | 機能の説明 | As/Rでの対応 |
---|---|---|---|
L | Logdsk | ドライブの変更 | ○ |
X | eXec | プログラムファイルの実行 | ○ |
C | Copy | ファイルのコピー | ○ |
D | Delete | ファイルの削除 | ○ |
R | Rename | ファイル及びディレクトリ名の変更 | ○ |
S | Sort | ファイルの並び替え | ○ |
F | Find | ファイルの検索表示(機能制限あり) | ○ |
T | Tree | ディレクトリのツリー表示 | – |
U | Unpack | アーカイブ解凍,及び Ish 復元 | ○ |
A | Attr | アトリビュートとタイムスタンプの変更 | ○ |
I | Info | ディスクのインフォメーション表示 | △ |
M | Move | ファイルの移動 | ○ |
Sfift+D | rmDir | ディレクトリの削除 | – |
K | mKdir | ディレクトリの作成 | ○ |
H | sHell | コマンドの実行 | – |
W | Write | 現在の表示ディレクトリの書き込み | – |
○:対応、-:未対応、△:一部対応